『超短編連載』透明な貴方
何も考えずに生きていたら中途半端に大人になってしまった。
年を取るたびに道が狭まっていく。それが明らかなストレスになっていることは分かった。
僕には心強い先輩がいる。
その先輩に相談したところ、大切なのは心の余裕なんだと言っていた。
でも、どんなことをすれば心に余裕ができるのかは教えてくれなかった。
心療内科に通ってもう1年になる。
相談している先生は非常に優しく、心強い方だ。
僕の話を一方的に聞いて、さらに的確な質問を投げかけてくれてからどんどん会話も進んでいく。話をさせるのも会話のテクニックとしてあるんだろうか。
大体1時間ほど先生と話が終わると別室に案内されるんだが、この別室での時間が僕にとって1番楽しみな時間である。
「こんにちは」
僕が声をかけたのは宮田という可憐な女性だ。
彼女はいつも窓際の席に座り、どこか遠くを眺めている。
「あら、久しぶりですね」
「そうですね…。最近割と落ち着いていたので」
「そうですか。それはよかった」
そう言ってほほ笑んだ。あぁ、可憐だ。
そもそも宮田さんはなぜここにいるんだろうか。
さすがにそこまで踏み込む自信が僕にはない。でも、そんなこと知らなくてもいいと思う。宮田さんもきいてはこないし、そもそも『なぜここにいるのか』という事など、どうでもいい。
宮田さんと出会える場所がここだから来ている。
それだけでいいじゃないか。
*
どうも。作者のほっくんです。
定期的に短編小説も書いていきたいと思っております。
以前は書いていたのですが、最近書かなくなってしまったので。
ちなみにすごい好きな作家さんは
住野よるさんと、三秋縋さんです。
作品を知る前から書いているのですが、僕の書きたい空気感をお二人とも体現しているのですよ…。
だから、お二人の作品を読んで少なからず影響されていると思います。
趣味の反中です。