誰かの日常

どっかの誰かが考えていること。どっかの誰かが悩んでいること。どっかの誰かが生きていること。脳内で生成させる誰かの日常を切り出した永遠の中二病ブログ

ホームレス時代の話

どうも。

今回は過去の話です。

 

就職が決まった当時、6月まで暇だった俺は、一旦東京に遊びに行きました。

人生で何度目の東京だったかは覚えてませんが、自分が知っている街を一通り巡りました。

その中で公園や駅近、大手の路地裏や高架下にホームレスの方々を発見しました。

人生初のホームレスとの遭遇。恐れとともに、興味も持ちました。

小説の題材になるかもしれないと、それから1週間ぐらいホームレスを体験してみようと思ったのですが、気がつけば2ヶ月の日々が流れていた。

今思えば正気の沙汰ではありませんが、その時に体験した話を書いてみたいなと思います。

 

まず、住処なんですが…基本的には許可を得ずにダンボールなどで陣取ります。ダンボールはコンビニやスーパー、飲食店の裏手から調達します。場所を巡って喧嘩になるホームレスもいるらしいですが、俺は出会ったことはないです。

難しいのは布団の調達。俺の場合は季節が夏だったので要らなかったですが、流石にダンボールがあるとはいえ、アスファルトやコンクリートやベンチに寝るのは硬すぎたので、調達しました。

この時に、サポートしてくれたのが初のホームレス友達(以下ホム友)山下さん(仮名)です。

当時57歳だった山下さんは、池袋の西公園付近で出会ったホームレスです。

 

ホームレスの大半は、家を失った、家族を失った、人生に悲観した方々なのですが、山下さんは自分から進んでホームレスになった人でした。もちろん褒め言葉として言いますが、異常者です。

ホームレス歴も1年半とまだ浅く、俺がホームレスの方々に取材していると言うと、快く付き合ってくれました。

今思うと、山下さんの協力なしでは生きていけなかった気がします。

 

炊き出しや配給の日程を教えてくれたのも山下さんだし、寝場所を数カ所に展開して警察に補導されるのを防いでくれたのも山下さんだし、コインシャワーの場所も、働きはしなかったけど、日雇いバイトを教えてくれたのも山下さんだった。

 

0から生きるノウハウを知ったし、この世の地獄も見た。

その地獄の中でも些細な幸せがあることや、自分の現状がどれだけ幸せなのか再確認する時間でもあった。

 

特に印象に残っているのは、月1で行なっていた【河川敷の宴】

近辺ホームレス数十人を集めた飯会だ。

日程を決めて、各自で食料を用意して集合場所に来ると言うシンプルなもので、一回だけ参加したことがある。

正直に書くと、20代、30代は、ホームレスと仲良くできない。相当な事情がない限りは嫌われてしまうからだ。

と言うのも、ホームレスの方々はわりかしプライドが高い。些細な発言でブチ切れる人もいるし、そもそも徒党を組んで生活しているホームレスがあまりいない。この宴すら奇跡のようなものだ。

その中に20代の俺がただ取材したいからという理由で参加できるわけもなく、山下さんの案で、1週間風呂に入らず、体を汚しまくり、悪臭漂う天涯孤独な20代になることで、なんとか認めてもらえた。

中には初見で認めてくれない人もいたが、山下さんと考えた不幸すぎる身の上話をする内に同情を買われ、仲良くなったというよりは、哀れみで置いてくれているという状態に持ち込めた。

 

宴は約2時間ほど行われた。各自で持ってきた食べ物の中には、コンビニ弁当の他に、飲食店の残飯から持ってきた絶対に食べれない匂いを放つ食べ残しや、10分の1ほどしか入っていない酒瓶などがあった。その場で1番豪華だったのはパックに入ったエビフライ3本だった。

どう入手したのかは教えてくれなかったが、持ってきたホームレスの人は、元万引き犯らしい。それ以上は誰も深く話を聞かなかった。

 

1時間ほどが経過し、ゆっくり噛み締めながらの食事会から、雑談混じりの食事会になった。

雑談といっても、ホームレスの方々がどういう経緯でホームレスになったのかや、なる前はこうだったという話ばかりで、全員に共通して言えることは、人間社会にうまく適合できなかったと言うことだ。

半数はバツ1。半数は童貞。全員女が苦手。嫌いではない。苦手。友人も少なく、心から信頼できる人は親以外いなかったらしい。そんな人ばかりだ。

ただ、どのホームレスの人も、明らかな欠点があってホームレスになったとは考えられなかった。

話を聞けば聞くほどその分岐で違う道に進んでいれば、最悪家はあったと言う話がほとんどだった。

なりたくはなかったが、どうしてもならざるを得なかった人がホームレスの正体なのかもしれないと思った。

 

 

帰り道、警察の通らない裏通りを道端で拾った湿気った煙草をまずいまずいといいながら吹かす山下さんと最後の対談をした。

「結局人間社会っていうのは、どんな人間でも何だかんだ生きていけるように見えるが、本質は違う。社会に適応できない心の弱い奴は淘汰される。それが人間社会の本質。早い話が集団の輪に入れねぇ奴は自動で篩に掛けられるんだ。そうして振り分けられた奴らは死ぬか、ゴミ同然として生きるかしかない。その中で幸せを見つけるものもいれば、ただ心臓だけ動いている屍もいる。これがホームレス。人間社会から淘汰された人間の末路だ。これは是非ともメモして載せといてくれ」

山下さんの最後の言葉、俺は忘れません。

 

皆さんはどうですか?

ここまでして生きる自信はありますか?

俺は約2ヶ月やってみましたが、とてもじゃないけど無理です。

でも・・・きっと死ぬことはできないんでしょうね。本当にそうなってみないと分かりませんが。

 

今回はこの辺で。

コメントが多ければもっと詳しく書きたいと思います。

それでは。